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2006年4月26日にミニアルバム「Rough Diamond」でCDデビューし、2021年でアーティストデビュー15周年を迎えた加藤和樹。音楽活動を続ける一方で、数々の舞台作品に出演。いまやグランドミュージカルはもとより、ストレートプレイなど演劇シーンには欠かせない、頼もしい存在だ。12月8日から幕を開けたミュージカル「フィスト・オブ・ノーススター~北斗の拳~」では、小野田龍之介とのWキャストでトキ役に挑んでいる。

9月にはデビューからこれまでの15年の軌跡を盛り込んだ2枚組の15周年記念アルバム「K.KベストセラーズⅡ」をリリース。「フィスト・オブ・ノーススター」の公演合間に自身のリリースツアーを実施するなど、相も変わらず驚異のスケジュールで舞台に立つ。2021年は嬉しいニュースも届き、ますます脂が乗ってきた加藤和樹。改めて歌への思いを聞いた。

――15周年という節目に、菊田一夫演劇賞を受賞されました。おめでとうございます。

マネージャーから電話があって、「情報解禁まで誰にも言わないように」ということで真面目に誰にも言わずにいました。発表後も自分からは言いませんでしたが、「おめでとう」とご連絡くださった方には返信しました。第一報は言っちゃいけないと思ってたから、発表になるまでは親にも言いませんでした(笑)。

――そうなんですね。実感がわいたのはどのタイミングでしたか?

受賞の連絡をいただいたときにも「ああ、(賞を)いただいたんだな」という思いはちょっとあったんですけど、本格的にわいたのは授賞式でした。

――7月には俳優の上口耕平さんを招き、アーティストデビュー15周年ライブ第1弾「Kazuki Kato KK-station 2021~Bravo!!~」が開催されました。

耕平とはミュージカルや舞台で共演していましたけど、一緒に歌う機会がなかなかありませんでした。一度、僕の番組に出ていただいて、がっつりではありませんでしたが、彼と歌えてすごく楽しかったので、いつかゲストにも来てもらえたらなって思っていたところ、オファーを受けてくださいました。ただ、ゲストのわりに歌う楽曲が多くて、耕平には負担をかけちゃったんですけど…(笑)。でも耕平も「こんなこと初めてだから」って楽しんでやってくれたので、本当、感謝しかないです。

――久しぶりの有観客ライブでもありましたね。お客様の前で歌うことに対して、改めて思われることはありますか?

ミュージカルもそうですけど、そこにいてくださることのありがたみですね。一度、無観客で配信ライブをやらせていただいたときに思ったのですが、やはり届ける先がカメラの向こうなので、目の前にいない寂しさがどうしてもぬぐえないんですよね。だから、実際に目の前にいるっていうだけで自然と笑みが出て、存在のありがたみは大きいなと思いましたね。

――9月にリリースされた2枚組アルバム「K.KベストセラーズⅡ」ですが、こちらのレコーディングは一発録りだったそうですね。ライブと比べてプレッシャーや緊張感はいかがでしたか?

もう比べものにならないくらい緊張しました。僕だけじゃなくて、一緒に演奏してくれるバンド、ドラスティックスのメンバーもそうだと思います。言っても僕は歌うだけですが、みんなは演奏なので、ミスタッチとかすごく気になっちゃう。そこでのプレッシャーはすごくあったみたいです。レコーディングも最初は和気あいあいとしていたんですけど、途中からみんな口数が少なくなって(笑)。でもライブ感がすごくありましたし、いつもレコーディングは一人で歌を吹き込むので、一体感をすごく感じましたね。

――この15年、歌を通して見つめ直すと、どのように思いますか。

……若かったなって(笑)。歌声ももちろん若いですし、考え方も含めて。…でも、なんかがむしゃらだったなって思います。そういうものって経験を積めば積むほどなくなっていくけど、必死だったんだなって思います。

――過去に作詞された作品で、今の自分に語りかけているような楽曲はありますか?

作詞するときはいつも自分自身に向けて書いているので、ある意味では自分へのメッセージソングでもあるんですよね。「Chain Of Love」を書いたときは「人とのつながりとか、人との関係性をすごく大切にするようになったんだな、自分…」って思ったり。自分がそうありたいという願望もあったんでしょうね。「ひとりじゃない」もそうです。自分はいつも一人だなって思っても、気が付いたら周りに支えてくれる人たちがいました。

――カバー曲も5曲、収録されています。どのような選曲理由だったのでしょう?

メッセージ性のある曲ということと、僕自身が歌いたいと思った楽曲です。あと、ピアノアレンジを効かせられる曲。自分の歌の力だけではまだ無理なので、まだまだ課題は山積みですが…。ミュージカルでいうと、オーケストラと呼吸を合わせるというか、自分が引っ張るのか、オケが引っ張るのかというバランスが大事で。ピアノだけとか、楽器と1対1になるとそこも見えやすくなるかなと思いきや、どっちかが遠慮するとか、譲りあうことも出てきて、タイミングの合わせ方は数をやらないとわからないなって思いました。ピアノライブで共演するフッキー(吹野クワガタ)は「KK-station」でもやってくれているけど、本当に二人の呼吸って大事だなって思います。

――カバー曲を歌う時に、ご自身の楽曲にはないご苦労はありますか?

僕はできるだけ原曲どおりに歌いたい人なんですけども、そうするとカラオケになってしまうので、それを避けたいというのはあります。なるべく原曲が持っている力を大事にしたいので、中西保志さんの「最後の雨」は結構、歌いまわしが大変でした。いかに自分のものとして歌うのかという難しさもあるので、「最後の雨」は苦労しましたね。でも、歌う人の声が違えば聴こえ方も違ってくるのが不思議で。それは「KK-station 2021~Bravo!!~」で耕平が僕の楽曲を歌ってくれて感じました。今まで自分の楽曲を誰かが歌うということがほとんどなかったので、「あ、こんなふうに聴こえるんだ!」って嬉しくなっちゃって。「いろんな人にも歌ってもらいたいな~」って、そんなことばっかり考えてます(笑)。

――収穫はたくさんありましたね。

ありましたね。そういうアプローチの仕方があるんだっていう。多分、大事にしている言葉が違ったり、お互いに持っている癖だったり、音への当て方が違ったりとか。その違いからいろんなことがわかりました。

――加藤さんの軌跡が詳細に綴られているアーティストデビュー15周年メモリアルフォトブック「K」(東京ニュース通信社)では、ハードな時代を振り返る場面で「逃げ道さえもわからなかった」とのご発言もありましたが、加藤さんに「それでもこの世界で生きていこう」と思わせたものは何だったのでしょう。

何でしょう……端的に言うと意地だと思うんですよね。誰かに言われたことが悔しいのではなくて、それができない自分が悔しかったので、自分自身に対する怒りしかないんですよね、いつも。誰かに言われたことよりも、それに応えられない自分が悔しい。それは芝居も歌もですけど。こんな自分のままでは終われないという意地がありますね。

――この15年、自分に対する意地を抱えながらサバイブしてこられて。今、歌うことに対して心境の変化はありますか?

10周年とか、それくらいでしたかね――これはミュージカルをやったのもあると思うんですけど、歌うことに対して「うまく歌わなきゃ」と思う瞬間がすごくあったんです。単純にもっと歌のスキルを上げなきゃという気持ちがすごく強い時期があって。自分の歌にはいつまでたっても自信が持てないので。そういう意味では、ミュージカルをやり始める前くらいから、歌に対するアプローチとか、届け方は変わってきました。今までは「歌を歌う、歌を届ける」というイメージでしたが、「言葉を届ける」という意識に変わってきました。

――そんな加藤さんの変化に、ファンの方のリアクションも変わりましたか?

どうなんでしょうね…(笑)。でも、笑顔になったような気がします。みんな、すごく感受性が豊かだから、楽曲によっては涙を流したり、笑ってくれたり、それこそ汗かいて「わ~!」って盛り上がってくれたり。そういうふうに応じてくれるのは、こっちの伝え方次第だと思うので、そこは意識するようにはなりましたね。

――加藤さんの歌は、ここ1、2年で急激に変わったような気がします。声と体がぴったりマッチングしたような。加藤さんに一体何が起こったのだろうとずっと思っていました。

まあ変わらず、発声とかトレーニングとか、次に作品があればそこで違う自分を見せないとって常に思っているので。役が違うと届け方が変わるのは当然なんですけど、それでも毎回、成長したと言われるのはすごく嬉しいし、そうでありたいと思っているので…。うん。響き方が変わってきたというのは、今まで使い切れていなかったことがたくさんあって、それをようやく自分のものにできてきたからかもしれないですね。でもまだ完全ではないと思うし、まだまだ自分は成長できると思うし…。その気持ちが大事なのかなと思います。

――声って時間かかるものなんですね。

いや~、そうだと思います。それは身をもって感じました。再演をやらせていただくと如実に感じるんですよね。初演では出なかったが音が出せるようになったとわかるので、自分でも。そうすると、もっとこういうアプローチもできるよなって思うんですよね。特にミュージカル『フランケンシュタイン』は、初演の時は本当にきつかったですけど、再演ではギリギリになることはほとんどなくなってましたね。本当、頑張って(声を)出しているって感じがあったんですけど、その感じが最近はなくなりました。

――そういう、頑張って出さなくなったというある種の余裕が受け手に届いているのかもしれないですね。

絶対そうだと思います。思い返せばいつも不安との戦いだったので。どの作品でも苦手な音があったので。最近はそこへの恐怖感、「ここが当たらないだろうな」っていう不安はあんまりないので…。だからのびのび歌えるし、それが自信につながるんでしょうね。もともと男の声帯は30歳からって言われていたので。30代から40ぐらいが一番成長するって。それを自分が体現できていることがすごくうれしいです。

――年齢を重ねて自分はどう変わっていくのだろうという期待感もありますか?

あります! これまた40歳から声が変わるというので、届け方、伝え方も変わってきますよね。歌える楽曲も変わってくるので、それも楽しみです。

取材・文/Iwamoto.K

<配信Live info>
Kazuki Kato Piano Live Tour 2021 ※配信チケット
2021/12/19(日)
■会場/心斎橋 JANUS
■時間/【第一部】13:00 ※第二部の配信なし 
■料金(税込)/配信チケット 視聴券\4,000 
・ライブ配信開始:2021/12/19(日)13:00
・アーカイブ配信:2021/12/26(日)23:59まで
・配信プラットホーム: PIA LIVE STREAM
視聴券発売日:2021/12/10(金)19:00~12/26(火)21:00
https://w.pia.jp/t/kazukikato-pls/

<Live info>
Kazuki Kato Live "GIG" Tour 2021-REbirth-
2021/12/16(木)
■会場/心斎橋 BIG CAT
■開演/18:00
■料金(税込)/全席自由 7,700円

Piano Live Tour 2021
2021/12/19(日)
■会場/心斎橋 JANUS
■開演/【第一部】13:00【第二部】16:30
※予定枚数終了。

■お問合せ/サウンドクリエーターTEL.06-6357-4400
http://www.sound-c.co.jp

「K.KベストセラーズⅡ」
●初回限定盤 TECI-1736 定価(税込):¥6,500
アルバムCD(2枚組)+60Pフォトブック
●通常盤 TECI-1738 定価(税込):¥4,500
アルバムCD(2枚組)

オフィシャルサイト http://www.katokazuki.com/


日本音楽界の至宝・細野晴臣は2019年に音楽活動開始から50周年を迎え、それをきっかけに改めて国内外の評価が高まっている。過去作品のアナログ化やリイシューも大々的に行われ、同年には念願のUSツアーを行い大成功を収めた。そして、彼の音楽活動の軌跡を辿る展覧会「細野観光」も東京で開催され、大好評を博した。その「細野観光」が本日11/12(金)より大阪市のグランフロント大阪 北館 ナレッジキャピタル イベントラボにて再び開催となった。細野は開催に先立ち行われた内覧会に、イベントのアンバサダーを務めるタレント、ゆりやんレトリィバァとともに出席した。

この展覧会は、細野晴臣がデビューした1969年から50数年の軌跡を、「憧憬の音楽」、「楽園の音楽」、「東京の音楽」、「彼岸の音楽」、「記憶の音楽」という5つの年代から巡るビジュアル年表を中心に、音楽、写真、映像、ギター・世界各地の楽器コレクション、音楽ノート、ブックコレクション(細野文庫)などを通じて、来場者が体験する展覧会となっている。会場が一方通行ではなく円形にレイアウトされているため、5つのテーマの展示を自由に観て回ることができるのも嬉しい。アンバサダーのゆりやんとは、2017年の大阪公演にゲストで呼んだのがきっかけで親交が生まれたという。お笑い大好きな細野らしい繋がりだ。自身のコレクションについては「自分の脳内をさらけ出しているようで恥ずかしい」という通り、子供の頃に集めていたマッチ箱やノートに始まり、使用楽器もギターやベースに留まらず民族楽器までに及ぶ。それらから多様な音楽性を窺い知ることができる。


また、USツアーの様子を収めたライヴ・ドキュメンタリー映画「SAYONARA AMERICA」も同日に上映が始まった。映画タイトルの「SAYONARA AMERICA」を、はっぴいえんどの1973年に発売されたラストアルバム『HAPPY END』の収録曲「さよならアメリカ さよならニッポン」から名付けていることについて細野は「はっぴいえんどで初めてアメリカに渡って録音したアルバムがこの『HAPPY END』。そのレコーディングの時にヴァン・ダイク・パークスがやって来てこの曲を作るのを手伝ってくれたんです。それ以来の付き合いで、この映画のコンサートにも来てもらいました。それではっぴいえんどのことを思い出しました。最後に作った曲でもあるんです。”音楽はアメリカの音楽、言葉は日本語”ということで、アメリカでは音楽は分かるけど言葉が分からないと、片や日本では言葉は分かるけど音楽が分からないなんて言われたんです。僕たちは一体どこへ行けばいいんだろう、というのがその時の心境。自分たちの居場所を見つけようとしたけどどこにもないなと。でも、今もその心境は変わらないんです。それを思い出したんです。このコロナ禍でまたアメリカが遠い国になってしまったこともあるし、色んな意味や気持ちを込めています。」と、今の自身の気持ちも交えて語ってくれた。

多様な音楽性を携えて彷徨い歩き続ける細野晴臣。展覧会「細野観光」と映画「SAYONARA AMERICA」を体験して、その片鱗を感じ取って欲しい。


<展覧会情報>
◎12/07(火)まで開催中
細野晴臣デビュー50周年記念展
「細野観光1969-2021」

■会場/大阪市・グランフロント大阪北館ナレジキャピタル EVENT lab.
■時間/10:00~20:00
■料金(税込)/一般 ¥1,500、高校生・専門学校生・大学生・シニア(65歳以上) ¥1,000、中学生 ¥500 ※小学生以下無料
[グッズ付きチケット]
チケットケース付き ¥1700
「細野観光」特製トートバック付き ¥2500
図録『細野観光1969-2021』増補版付き ¥5000
図録『細野観光1969-2021』増補版+特製トートバック付き ¥6000
SPECIALチケット(チケットケース+図録『細野観光1969-2021』増補版+特製トートバック) ¥6200
■お問合せ/キョードーインフォメーション 0570-200-888(11:00~16:00/日曜・祝日は休日)
■主催/「細野観光 1969-2021」実行委員会(朝日新聞社、キョードーグループ、乃村工藝社、LIVE FORWARD) ■後援/ FM802/FMCOCOLO
■展覧会詳細:https://hosonokanko.jp


『愛のむきだし』『冷たい熱帯魚』など、奇想天外な展開の作品を撮り続けてきた園子温監督。そんな園監督がついにハリウッドに進出した。この映画「プリズナーズ・オブ・ゴーストランド」はニコラス・ケイジを主演に、時代劇やマカロニ・ウェスタンの要素をふんだんに盛り込んだ色彩豊かな作品に仕上がった。今回は園監督への会見の様子をQ&Aでレポートする。



Q:アメリカから送られてきた脚本を最初に読んだ時の印象は?
園子温監督(以下、園監督)「最初に読んだ時は、面白いというか、製作費がめちゃくちゃかかりそうな内容だなと思いました。でも最初から何でもいいから受けようと思ってたんです。僕は、『愛のむきだし』の映画を作る前から、15年間くらいアメリカに対してプロモーションを仕掛けてました。ハリウッドに出向いて、その筋の関係者に「ハリウッド映画を撮らしてくれ!」と、いろんな会社に掛け合ってたんです。なかなかうまくいかず、トライ&エラーを繰り返してるうちに時間がかかってしまいました。ラブロマンスからアクションからホラーまで、いろんな企画を立ち上げ、うまくいきそうなものもあったけど、結局映画化まではいかなかったんです。この脚本が3年前に送られてきた時、早くハリウッドデビューしたいという想いが強かったので、読む前から基本OKだったんです。何が何でもOKというところから出発した映画です」

Q:プロデューサーからの制約、リクエストはあったのですか?
園監督「プロデューサーからの要望はそんなにたくさんなかったです。クランクインまでに自分なりの色も出せると思っていたし、脚色してリライトも可能だと思ってました。案の上、紆余曲折ありまして、元々の脚本から75%くらいはオリジナルな脚本に仕上げることができました。例えば、坂口拓が演じたキャラクターは、元々の脚本にはなかったんですけど、僕が付け加えたり、いろいろな要素を足し引きしながら変化させていきました。ある程度の許容がプロデュサーにあったので助かりました」


園子温監督

Q:ハリウッド映画でも園イズムをバンバン感じました!
園監督「若い頃にハリウッドデビューしていれば、憧れのハリウッドでもあったし、優等生を目指したかもしれないんですけど、僕もキャリアを重ねながら変化してきたんです。『スカーフェイス』のアル・パチーノみたいに『ハリウッドで成り上がるぜ!』みたいなノリも昔はあったんですけど、そいいうものが全部削ぎ落とされて今に至るので、結局は15年かけてハリウッドデビューと言っても、やってることはいつもといっしょだったんです。あんまり、気取りもせず、馴染もうともせず、僕のいつもの映画の延長線上にある作品に仕上がったと思います」

Q:ニコラス・ケイジさんの役者として魅力は?
園監督「映画プロジェクトがスタートして、1年ぐらいしてからニコラス・ケイジが主演に決まったんですが、なぜニコラス・ケイジなのか?僕自身も謎でした。そんなタイミングでニコラスが来日し、東京で会うことになったんです。その時にニコラスから『前から園監督のファンで『アンチ・ポルノ』を観た時に号泣し、『ノリコの食卓』を観た時は本当に感動した』と言ってくれたんです。すごいマニアックな意見だなと思って、この男は信用できるって思いました。彼は、現場では22歳ぐらいの若手俳優ぐらいに謙虚で、日本でもこんなに謙虚な俳優はあんまり見たことないです。最初に会った時も、1人でぶらっと来て、安い居酒屋で「安いね!」って言いながら飲んでましたから。現場でもスター然とすることなく、ごく普通に監督に言われた通り演じてくれる従順な役者さんでした。とてもやりやすかったです」


Q:ヒロインのソフィア・ブテラさんのアクションも良かったです!
園監督「彼女のキャスティングも謎だったんですけど、あとから聞いたら、直前までギャスパー・ノエの『CLIMAX』に出演していたらしく、その現場に台本が 届いて相談したら、ギャスパー・ノエから『園子温監督の作品なら出演した方がいいだろ!』っ言ってくれたらしく、その一声で出演を承諾したそうです。彼女のアクションは素晴らしかったですね!拓も驚いてました。キレが全然違って、キックの足もすごい上がって、見た目も迫力も満点でした。ソフィアはすごく情熱的な女優です。生まれ育ったアルジェリアでダンサーをやっていたから、女優というより、しなやかで強さがあり、彼女の人生が垣間見える生命力を感じさせてくれるカッコいい女性でした。本当、ギャスパー・ノエに感謝です」


Q:今後のハリウッド作品の予定は?
園監督「次からはアメリカで撮りますよ!来年には2作目、3作目を予定しています。僕にとっては、次からオリジナル脚本で撮れるというのが一番大きいですね。ここからが勝負!ハリウッドでは新人なので、ここから僕が上がっていかなきゃいけないんです。今後はハリウッド映画のフィールドで頑張りますが、愛知のことも忘れず頑張りたいと思っています。応援よろしくお願いします」

◎Interview&Text/川本朗(リパブリック)

10/8 FRIDAY〜【名古屋・伏見ミリオン座 他全国ロードショー】
映画「プリズナーズ・オブ・ゴーストランド」
■監督:園子温
■脚本:アロン・ヘンドリー レザ・シクソ・サファイ
■出演:ニコラス・ケイジ ソフィア・ブテラ ビル・モーズリー ニック・カサヴェテス
■音楽:ジョセフ・トラパニーズ
■配給:ビターズ・エンド


ガブリエル・レンジ監督による若き日のデヴィッド・ボウイを描いた映画「スターダスト」が公開中である。今作品はボウイがジギー・スターダストとしてカリスマ的存在となる直前を描いた物語。アーティストとしてのアイデンティティを確立する過程、兄・テリーとの関わりなど今まであまり注目されなかった内容にスポットを当てている。今回はライターで翻訳家でもある野中モモさんにこの映画の見どころを話して頂いた。野中さんはデヴィッド・ボウイに関する著作もある他、2017年に日本でも開催された大回顧展「DAVID BOWIE IS」の公式図録の翻訳も手掛けている。


1969年に「スペース・オディティ」がヒットしたデヴィッド・ボウイは、この頃程なく入籍するアンジェラ・バーネット(ジェナ・マローン)と出会い、ロンドン大邸宅を集合住宅に改装した「ハドンホール」にバンドメンバーと共に移り住んでいた。そんな中制作されたアルバム「世界を売った男」(1970)を、なんとか売り込もうとアメリカへプロモーション・ツアーに出かける。1971年、このアメリカでの出来事が物語の軸となっている。「世界を売った男」は90年台以降に再評価されたものの、当時は決してヒットしたとは言えない作品。ボウイは「スペース・オディティ」が少し売れただけの「一発屋」として見られていた。
野中:私は「ジギー・スターダスト」以前、初期のデヴィッド・ボウイがすごく面白いと思っているんです。ファーストアルバム「デヴィッド・ボウイ」(1967)なども演劇的な要素が盛り込まれていて、後世に影響を与えている重要な作品なんです。ただこのアルバムも、泣かず飛ばずだったという見方をされることがほとんどなので、今回の映画をきっかけに再評価されるといいなと思っています。


物語はサクセスストーリーとは程遠い「トホホなロードームービー」と言っていい内容。だからこそ、ロック・スターであるデヴィッド・ボウイの人間臭い面が垣間見られる作品となっている。プロモーション・ツアーでボウイ(ジョニー・フリン)はひとりでアメリカの空港に辿り着く。入管では、観光ビザのためにライブ演奏はできないと言われてしまい、いきなり出鼻をくじかれる。迎えにきたのは、当時所属していたマーキュリー・レコードのパブリシストであるロン・オバーマン(マーク・マロン)。その日はホテルが用意されておらず、ロンの実家に泊まり食事も家族と共にする。この辺りのボウイが感じたであろう息苦しさもスクリーンから顕著に伝わってくる。
野中:まだ駆け出しのアーティストが、成功を目指してもがいている青春映画。そして1970年台という時代の空気、半世紀前のエンターテイメントの世界。まだいかがわしいというか、きちんと管理されて情報がすぐ行き渡る現在とは、全く違った時代の空気を感じることができるのも魅力ではないかなと思います。


ボウイはロンと二人で、ギターを手に車でプロモーションにあちこち出かける。インタビューでは上手く自分を表現できず、バーや身内のパーティーで歌っても誰も耳を貸さない。しかしこのいくつかの出来事は、まだ世間がボウイの魅力に気付いていないのと同時に、ボウイ自身もアーティストとしての方向性を確立していないことを思い知る機会にもなった。ロンはその足掛かりを2つボウイに渡す。ひとつはレジェンダリー・スターダスト・カウボーイというミュージシャのシングル・レコードを薦めたこと。もうひとつは、当時ザ・ストゥージズとして人気を誇ったイギー・ポップの存在を語ったことだ。映画ではイギー・ポップの他、ルー・リードやアンディ・ウォーホルとの関わりも盛り込まれている。
野中:私はイギー・ポップの話をするシーンが好きです。車に乗って、アメリカの田舎を車で旅をしながら「なんかすげえやつがいるんだ」と。そういう何か人のやることが他の人に影響を与えたり、ちっちゃな善意に救われたり、通じ合うことで手応えを感じて次に進んでいくという、こういう姿は自分に照らし合わせて考えられる方もいるのではないかと思いました。
「ジギー・スターダスト」の名前は、このイギー・ポップの名前(IGGY)とレジェンダリー・スターダスト・カウボーイが由来であると言われている。


またこの作品では、兄・テリーとの関わりが丁寧に描かれている。音楽を教えてくれた大好きな兄は、統合失調症を煩い病院に入院することとなる。兄を心配すると同時に、自分もいつか発症するのではないかという恐れを抱く。
監督・脚本のガブリエル・レンジは「彼の初めての渡米に関してはあまり記録が残っていない。ある意味、最悪の旅だった。自分の曲を宣伝しにきたにも関わらず、ビザも、音楽家ユニオンの書類もなかったため、彼は目的の曲の演奏が許されなかった。代わりに彼は、別人格であるジギー・スターダストを創り上げるための幾つかのアイデアを発見した。デヴィッドが悩んだ末にたどり着いた、狂気を安全に経験する方法がジギーなのかもしれない。多重人格障害が発症する前に、多重人格を作り上げてしまう手法なのかもしれない。それは、世界的な有名ロックスターになるという妄想を現実へと変えてしまった。」と述べている。
物語はボウイが開眼し、バンドメンバーを説得して「ジギー・スターダスト」を作り上げようとするところで幕を下ろす。それ以降は世界が知るデヴィッド・ボウイとなるから描く必要はないと、そう言わんばかりの映画である。

◎Interview&Text/福村明弘

10/8 FRIDAY〜【名古屋・伏見ミリオン座 他、全国ロードショー】
映画「スターダスト」
■監督/ガブリエル・レンジ
■脚本/クリストファー・ベル
■出演/ジョニー・フリン、ジェナ・マローン、マーク・マロン
■配給/リージェンツ


2021年09月16日 <インタビューORANGE RANGE>

ポップでダンサブルな楽曲の数々で夏を彩ってきてくれたORANGE RANGE。しかしこのコロナ禍によって出演予定だった多くのフェスやライブが次々に中止となった。この苦しかった2年間のこと、そしてテレビアニメへの楽曲提供など、新たな一面について、フロントマンHIROKIさんへインタビュー。
結成20周年を迎えたORANGE RANGEの今、そして秋に始動する全国ツアーについて聞いた。

この秋放送開始となるタツノコプロ原作のテレビアニメ「MUTEKING THE Dancing HERO」のオープニングテーマに「ラビリンス」が起用されるORANGE RANGE。ダンサブルでポップなイメージに一新された新生MUTEKINGの誕生に華を添えた。またバンド結成20周年という節目を迎える今年、さまざまなジャンルを開拓し続けるORANGE RANGEの現在、過去、未来をフロントマンHIROKIさんに伺った。

―今回のMUTEKING THE Dancing HEROのオープニングを手掛けられた経緯を教えてください。
HIROKI:お話を頂いてから結構いろんなやりとりをしました。まずこの作品の最初のシリーズは僕らの世代とは少し上でしたから、初期のシリーズを観て、今回リメイクされる作品も完成間近の何話かは見せていただくことから始まりました。そこから監督やプロデューサーと意見交換しながら作り上げていった感じですね。

―結成20周年となるエポックなタイミングに、このコロナ禍という試練が世間を襲いましたがメンバーの方々はこの2年をどう過ごされていたんですか?
HIROKI:最初の頃はこのコロナ禍によって出演予定だったロックフェスやライブのすべてがキャンセルになってしまって相当戸惑いました、バンド自体もすごくいい感じになって来ていたところだったので相次ぐライブのキャンセルは残念でした。でもそんなに長くは続かないだろうと思ってはいたんですが、さすがに長期化が見えた頃から開き直って楽曲制作に没頭しようと意識を変えました。

―そんな中でのアニメ番組への楽曲提供という流れになったのですか?
HIROKI:なかなか会えない状態が続いたメンバーとはリモートでやりとりしたりして作っていきました。一堂に会すという事が無理だったんで、リモートで話し合ったり、データのやりとりをしながら、相当たくさんの曲が出来上がりました。そんな中からアニメのお話を頂けたので楽曲の仕上げに関しては問題なかったですね。


―ORANGE RANGEのフロントマンとして、この20年を振り返ってみて何を感じておられますか?
HIROKI:曲を作れるメンバーが多いので、曲のアイデアを持ってるメンバーがまず中心になってみんなに提示して、そこに他のメンバーがアイデアを色々足していくというスタイルはずっと変わりません。20年もやっていますから、もうお互いの距離感も理解しあっていて、今すごく良い環境だと思います。

―デビュー当初からバンドのサウンドメイクの方向性に何か変化はありましたか?
HIROKI:シンプルな構成の楽曲が増えたように思います。足し算でなく引き算で深めていくような感じ。デビュー当時はとにかく勢い重視って感じだけでしたからね(笑)

―結成20周年ですが、そのずっと前からメンバーとは幼なじみだったわけですよね。こうしてバンドを続けてこられて関係性に変化とかはありました?
HIROKI:出会ってからはもう35年ですよ。保育園の頃から一緒ってメンバーもいますし、もうバンド以上の歴史があります。とにかくバンドをやろうって始めちゃいましたが、
当初はこんなに続くとは思わなかったですね。それがプロの世界に入ってみて、最初は幼なじみとバンドメンバーというふたつの関係性をうまく両立出来なかった時もあったんですが、20年もやってると、なんか一周して、また子供の頃のような関係になって戻っちゃった感じです。

―20周年を迎えた全国ツアーはどんな内容になるのか少し教えてもらえますか?
HIROKI:僕らにとってライブはいちばん重要なことだと思っています。20年という時を経て二世代で来ていただけるお客さんも増えてきているし、僕たちの今だからこそという内容になればいいなと思っています。このコロナで何もできなかった時間を無駄にしたくないですね。実はRYOが鍵盤をストイックに練習していて、けっこう形になってきているんです。ライブではそんな努力家RYOの鍵盤プレイも披露できると思います。コロナ禍のこんな時代だからって感じには絶対にしたくない。ORANGE RANGEならではの空間を創れたらと思っています。

―今後、30周年に向けてORANGE RANGEはどんな進化を遂げていくのでしょうか?
HIROKI:その時代、時代に乗っかりながら、良い意味での“芯がない感覚”でずっとやっていけたらと思っています。楽曲の作り方も年相応にもっと丁寧になっていくだろうし、自分たちにとっても未来が楽しみですね。新しい作品に向けての楽曲もこのコロナ禍でたくさん出来上がっていますから、そちらにも期待してください。
取材・文=石原卓



20th Anniversary ORANGE RANGE LIVE TOUR 021
〜奇想天外摩訶不思議〜
https://orangerange.com/tour021/


2021/10/01 (金)
■会場/Zepp Osaka Bayside
■開演/18:30
■料金(税込)/全席指定 ¥5,800
■お問合せ/キョードーインフォメーション TEL.0570-200-888(平日・土曜11:00~16:00)

2021/10/03 (日)
■会場/南海浪切ホール
■開演/18:00
■料金(税込)/全席指定 ¥5,800
■お問合せ/浪切チケットカウンター TEL.072-439-4915

ORANGE RANGE
「HEALTH」
2021.06.30 DELIVERY
※「HEALTH UP PROJECT supported by TANITA」キャンペーンソング

主要配信サイトおよび各サブスクリプションサービスで配信
https://jvcmusic.lnk.to/HEALTH


ORANGE RANGE – HEALTH(MUSIC VIDEO)
https://youtu.be/vwD2Qf6kqG8

「HEALTH」特設サイト
https://orangerange.com/health/