HOME > MEGLOG【編集日記】 > 〈会見レポート〉南野陽子と林田一高による朗読劇『アネト』について作・演出の土田英生に聞いた

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2022年、詩をテーマにした舞台作品「100年の詩物語」をスタートする兵庫県立芸術文化センター。第1回は南野陽子、林田一高(文学座)を迎え、MONO代表であり、劇作家、役者としても活躍する土田英生書き下ろしの朗読劇『アネト』を11月23日(水・祝)に同劇場で上演する。
神戸で活躍した詩人、竹中郁の詩を折々に織り込みながら、姉と弟の2人の物語を「手紙の朗読」という形式で綴る本公演。開催を前に取材会を行った土田が、作品のコンセプトや、朗読劇の醍醐味などを語った。


作・演出の土田英生

ある日、神戸で暮らす女性の元に手紙が届く。それは養子に出されたという「弟」からの手紙だった。姉は弟に返事を書く。折々に地元出身の詩人、竹中郁の詩を添えてーー。その日から生涯にわたる二人の手紙のやり取りが始まる。互いを思いながらすれ違う姉弟(あねと)、それぞれの人生と情愛を、手紙と手紙に添えられた詩の朗読を通して描く。

竹中郁の詩を朗読するのは、関西で活動する男女8人の俳優。「ミュージカルはお芝居の間に歌が入ります。今回は詩の朗読をミュージカルの歌の部分だと捉えて、手紙で二人のやり取りをしながら、間に竹中郁さんの詩を挟み込んでいくという形で物語を展開させようと思いました」。

「各々の人生の節目や壁にぶつかったとき、孤独に苛まれたときに、会ったことがない、だけど血のつながった姉弟にお互いが手紙を出し合います。二人の人生の断片を、手紙を通して感じてもらえたら」と話す土田だが、「どういう状況で人が関係を結んでいるか」ということを大事に思うからこそ、「やっぱり血がつながっているからね」という描き方はしたくないと言う。

「先天的なもので人の関係は決まらない。自分がどういう形で人と触れ合っていくか、どういう気持ちを持って関わるかによって、関係が決まると思っています。この二人は手紙のやり取りがあるからこそ関係性を積み上げられるはずだし、どこかに「僕にお姉ちゃんがいる」「いざとなったら弟がいる」という思いがあるからこそ、実際に会うことは最後の切り札とお互いが思っている関係というのがいいなと。姉と弟でありながらソウルメイトみたいな存在というか」。


朗読劇と銘打っている以上、演劇ではできないもの、舞台上で本を読むからこそ成立するものを上演したいと意気込む。「朗読劇ならではの表現をしっかり作って、演劇に負けないひとつのジャンルとして発表できたら。また、朗読劇で改めて“この人にはこんな魅力があったんだ”と思うことがあります。今回、南野陽子さんの違った一面が見えてくるといいなと思いますし、林田さんは文学座で実績のある俳優さんですから力は問題ないと思います」と、主演の二人にも期待を寄せる。

竹中の人生からも着想を得たという『アネト』。土田は、竹中の詩を通して世界の見え方が変わることも目的にしていると話す。「ときには物語と全く関係ない詩も朗読します。そうすることで、ちょっとずれるからこその面白さが出るんじゃないかなと思っています。竹中さんの詩は割と日常の何げないことを書いている印象があって。でも、何げないことの見え方が竹中郁さんとしか言いようがない。自分にはない視点です。まるで竹中さんのレンズをかけて世界を見ているような面白さがあります」。

朗読劇の代表作ともいえる『ラヴ・レターズ』を学生時代に読み、仰天したと話す土田。「幼なじみが手紙のやり取りをしているのですが、二人は結ばれない。ドラマだったら、結ばれない理由を作ったり、二人の間に横槍が入ったりとか、理由づけをして物語を進めますが、実際の人生ってそうじゃないですよね。僕は『ラヴ・レターズ』を読んだ時、フィクションと分かっていても驚きの連続で、あえて書かれていないからこそ信じられるというか、人生ってそういうもんだなという気がしました。そのときの驚きみたいなもので自分自身の好みが形づくられたのだと思うのですが、僕は演劇でもそうしたいと思っています。その中で朗読劇は“盗み聞き”の面白さを出せるのが魅力だなと思っています」。

◎取材・文/岩本和子



11/23 WEDNESDAY・HOLIDAY
兵庫県立芸術文化センタープロデュース
100年の詩物語
朗読劇「アネト~姉と弟の八十年間の手紙~」
【チケット発売中】
■会場/兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
■開演/14:00
■料金(税込)/一般 ¥3,500/U‐25チケット ¥1,500
■出演/南野陽子、林田一高
■朗読アンサンブル/池川タカキヨ、石畑達哉、高阪勝之、髙橋明日香、竹内宏樹、立川茜、東千紗都、松原由希子
■作・演出/土田英生
■詩/竹中 郁
■お問合せ/芸術文化センターチケットオフィス TEL 0798-68-0255 
      (10:00AM‐5:00PM/月曜休み ※祝日の場合翌日)