HOME > MEGLOG【編集日記】 > <会見レポート!>女性3人の会話劇『truth~姦しき弔いの果て~』堤幸彦監督

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堤幸彦監督のインディーズ映画『truth~姦しき弔いの果て~』が全国公開中だ。本作は「精子バンク」をテーマに女の本音を映し出した、俳優3人による会話劇となっている。 今回はこれが50作目となる堤幸彦監督の合同インタビューをレポート!

ある男の葬儀の夜、彼のアトリエで3人の女性が鉢合わせする。全くタイプの違う彼女たちは、それぞれ3年前からその男と同時に付き合っていたことが発覚し―。広山詞葉、福宮あやの、河野知美の3人が、ワンシチュエーションの演技合戦を熱く展開する。

―どのように企画が立ち上がったんですか?

私も含めコロナ禍で映像、舞台などさまざまなショービジネス関係者が今も苦労しています。私は今66歳で、22歳の頃からこの仕事を始めて仕事が途切れることはなかったんですが見事に0になってしまいました。その時に3人の女優から「映像作品を作りたい」と、とてつもない熱量の体当たりを受けました。ちょっと笑えて切なくて、一言では語れない映画にすべきではないかと僕から提案し、一人の男と3人の女が同時に付き合っていて、ミステリーも残る構造にしたいと思いました。

ー個性的な女性たちのキャラクターは狙い通りに?

そうですね。今を生きる女性の側面を3人に散りばめようと思いました。3人を当て書きのように書いた脚本の三浦有為子さんの神通力にも驚きましたが、巧みにキャラ分けされ、ぴったりハマりました。広山詞葉さんが演じたのは狭いエリアの中で自分がNo.1だと思っていて、そう思わないと生きていけない寂しさを抱えた女性。福宮あやのさんはシングルマザーの元ヤンキー役。妊娠中の身で参加してくれました。生命力のある役者ですね。河野知美さんも成り立ちと立ち位置が面白い役。理詰めで物事を追究し、爆発した時が面白い。三人三様の3人と作った映画が偶然にも私の50本目で、今後の作品作りの一里塚になると思います。


―3人の女性に愛される男の役に、佐藤二朗さん。キャスティングは?

資産家、多趣味、絵も達者な男。僕は佐藤二朗しか思い浮かばなかったです。同じ愛知出身で同郷の同志ですが、彼はカリスマ性、イケメンでは醸し出せない神々しさがあります。この作品は諸外国で7つの賞をいただいていて、イギリスの映画祭ではベストコメディー賞。佐藤二朗なんか誰も知らないのに、彼が出てきた瞬間、爆笑が起きたんです。世界に通じる笑える顔なんですかね。本当にキャスティングしてよかった。

ーインディーズ映画をやってみて良かった点は?

誰にも気を遣わず、気兼ねも制限もなく面白おかしくできたこと。製作委員会方式の映画は企業が出資し、その分いろいろチェックが働くんですが、私も自主規制してしまい作品が丸くなっちゃうんです。今回は全くそれを意識せずにやれた。ゲリラ的なモノ作りをしていた僕らのような人間も、長年続けていると口当たりのいいものに走りがちです。眉をひそめるようなもの、過激なもの、仰天するものが創作の原点にあることを忘れていたかもしれない。制限なしに作ることが本来の創作の第一歩。戒めに気づかされました。もう一度自分を初期化する意識を持てて良かったと思います。

ーコロナを経ての発見は?

ショービジネスが完全に閉ざされ、本当にいくつもの作品が消滅や延期になりました。我々の仕事自体が非常時には不要不急だと存在価値を全否定されているような時代で、飲食業などたくさんの方が大変な事態になってしまった。それに対し国家はある程度のセーフティーネットは発動させていると思いますが、実感もありません。でもこんな時だからこそ、インディーズとはいえ世界に評価もされた。「信じて進む」というスローガンをしっかり持ち、コツコツと立ち上がっていくことを彼女たちから教わりましたね。同じような思いをたくさんの作り手が持っていて、これまでとは違うやり方があるんじゃないかと模索しています。表現の経済的基盤も含めた再構築はコロナを経ての学習でした。前に進むための気づきになったと思います。

◎Interview&Text/山口雅


1/7 FRIDAY~
[名古屋・センチュリーシネマ、大阪・シネリーブル梅田他 全国ロードショー]
映画「truth~姦しき弔いの果て~」
■監督・原案/堤幸彦
■出演/広山詞葉 福宮あやの 河野知美 佐藤二朗
■脚本/三浦有為子
■脚本/ラビットハウス
©2021 映画 「truth~姦しき弔いの果て~」パートナーズ