HOME > MEGLOG【編集日記】 > <インタビュー>加藤和樹、デビュー15周年のメモリアルイヤーに開いた新境地とは
2021年12月13日 <インタビュー>加藤和樹、デビュー15周年のメモリアルイヤーに開いた新境地とは
2006年4月26日にミニアルバム「Rough Diamond」でCDデビューし、2021年でアーティストデビュー15周年を迎えた加藤和樹。音楽活動を続ける一方で、数々の舞台作品に出演。いまやグランドミュージカルはもとより、ストレートプレイなど演劇シーンには欠かせない、頼もしい存在だ。12月8日から幕を開けたミュージカル「フィスト・オブ・ノーススター~北斗の拳~」では、小野田龍之介とのWキャストでトキ役に挑んでいる。
9月にはデビューからこれまでの15年の軌跡を盛り込んだ2枚組の15周年記念アルバム「K.KベストセラーズⅡ」をリリース。「フィスト・オブ・ノーススター」の公演合間に自身のリリースツアーを実施するなど、相も変わらず驚異のスケジュールで舞台に立つ。2021年は嬉しいニュースも届き、ますます脂が乗ってきた加藤和樹。改めて歌への思いを聞いた。
――15周年という節目に、菊田一夫演劇賞を受賞されました。おめでとうございます。
マネージャーから電話があって、「情報解禁まで誰にも言わないように」ということで真面目に誰にも言わずにいました。発表後も自分からは言いませんでしたが、「おめでとう」とご連絡くださった方には返信しました。第一報は言っちゃいけないと思ってたから、発表になるまでは親にも言いませんでした(笑)。
――そうなんですね。実感がわいたのはどのタイミングでしたか?
受賞の連絡をいただいたときにも「ああ、(賞を)いただいたんだな」という思いはちょっとあったんですけど、本格的にわいたのは授賞式でした。
――7月には俳優の上口耕平さんを招き、アーティストデビュー15周年ライブ第1弾「Kazuki Kato KK-station 2021~Bravo!!~」が開催されました。
耕平とはミュージカルや舞台で共演していましたけど、一緒に歌う機会がなかなかありませんでした。一度、僕の番組に出ていただいて、がっつりではありませんでしたが、彼と歌えてすごく楽しかったので、いつかゲストにも来てもらえたらなって思っていたところ、オファーを受けてくださいました。ただ、ゲストのわりに歌う楽曲が多くて、耕平には負担をかけちゃったんですけど…(笑)。でも耕平も「こんなこと初めてだから」って楽しんでやってくれたので、本当、感謝しかないです。
――久しぶりの有観客ライブでもありましたね。お客様の前で歌うことに対して、改めて思われることはありますか?
ミュージカルもそうですけど、そこにいてくださることのありがたみですね。一度、無観客で配信ライブをやらせていただいたときに思ったのですが、やはり届ける先がカメラの向こうなので、目の前にいない寂しさがどうしてもぬぐえないんですよね。だから、実際に目の前にいるっていうだけで自然と笑みが出て、存在のありがたみは大きいなと思いましたね。
――9月にリリースされた2枚組アルバム「K.KベストセラーズⅡ」ですが、こちらのレコーディングは一発録りだったそうですね。ライブと比べてプレッシャーや緊張感はいかがでしたか?
もう比べものにならないくらい緊張しました。僕だけじゃなくて、一緒に演奏してくれるバンド、ドラスティックスのメンバーもそうだと思います。言っても僕は歌うだけですが、みんなは演奏なので、ミスタッチとかすごく気になっちゃう。そこでのプレッシャーはすごくあったみたいです。レコーディングも最初は和気あいあいとしていたんですけど、途中からみんな口数が少なくなって(笑)。でもライブ感がすごくありましたし、いつもレコーディングは一人で歌を吹き込むので、一体感をすごく感じましたね。
――この15年、歌を通して見つめ直すと、どのように思いますか。
……若かったなって(笑)。歌声ももちろん若いですし、考え方も含めて。…でも、なんかがむしゃらだったなって思います。そういうものって経験を積めば積むほどなくなっていくけど、必死だったんだなって思います。
――過去に作詞された作品で、今の自分に語りかけているような楽曲はありますか?
作詞するときはいつも自分自身に向けて書いているので、ある意味では自分へのメッセージソングでもあるんですよね。「Chain Of Love」を書いたときは「人とのつながりとか、人との関係性をすごく大切にするようになったんだな、自分…」って思ったり。自分がそうありたいという願望もあったんでしょうね。「ひとりじゃない」もそうです。自分はいつも一人だなって思っても、気が付いたら周りに支えてくれる人たちがいました。
――カバー曲も5曲、収録されています。どのような選曲理由だったのでしょう?
メッセージ性のある曲ということと、僕自身が歌いたいと思った楽曲です。あと、ピアノアレンジを効かせられる曲。自分の歌の力だけではまだ無理なので、まだまだ課題は山積みですが…。ミュージカルでいうと、オーケストラと呼吸を合わせるというか、自分が引っ張るのか、オケが引っ張るのかというバランスが大事で。ピアノだけとか、楽器と1対1になるとそこも見えやすくなるかなと思いきや、どっちかが遠慮するとか、譲りあうことも出てきて、タイミングの合わせ方は数をやらないとわからないなって思いました。ピアノライブで共演するフッキー(吹野クワガタ)は「KK-station」でもやってくれているけど、本当に二人の呼吸って大事だなって思います。
――カバー曲を歌う時に、ご自身の楽曲にはないご苦労はありますか?
僕はできるだけ原曲どおりに歌いたい人なんですけども、そうするとカラオケになってしまうので、それを避けたいというのはあります。なるべく原曲が持っている力を大事にしたいので、中西保志さんの「最後の雨」は結構、歌いまわしが大変でした。いかに自分のものとして歌うのかという難しさもあるので、「最後の雨」は苦労しましたね。でも、歌う人の声が違えば聴こえ方も違ってくるのが不思議で。それは「KK-station 2021~Bravo!!~」で耕平が僕の楽曲を歌ってくれて感じました。今まで自分の楽曲を誰かが歌うということがほとんどなかったので、「あ、こんなふうに聴こえるんだ!」って嬉しくなっちゃって。「いろんな人にも歌ってもらいたいな~」って、そんなことばっかり考えてます(笑)。
――収穫はたくさんありましたね。
ありましたね。そういうアプローチの仕方があるんだっていう。多分、大事にしている言葉が違ったり、お互いに持っている癖だったり、音への当て方が違ったりとか。その違いからいろんなことがわかりました。
――加藤さんの軌跡が詳細に綴られているアーティストデビュー15周年メモリアルフォトブック「K」(東京ニュース通信社)では、ハードな時代を振り返る場面で「逃げ道さえもわからなかった」とのご発言もありましたが、加藤さんに「それでもこの世界で生きていこう」と思わせたものは何だったのでしょう。
何でしょう……端的に言うと意地だと思うんですよね。誰かに言われたことが悔しいのではなくて、それができない自分が悔しかったので、自分自身に対する怒りしかないんですよね、いつも。誰かに言われたことよりも、それに応えられない自分が悔しい。それは芝居も歌もですけど。こんな自分のままでは終われないという意地がありますね。
――この15年、自分に対する意地を抱えながらサバイブしてこられて。今、歌うことに対して心境の変化はありますか?
10周年とか、それくらいでしたかね――これはミュージカルをやったのもあると思うんですけど、歌うことに対して「うまく歌わなきゃ」と思う瞬間がすごくあったんです。単純にもっと歌のスキルを上げなきゃという気持ちがすごく強い時期があって。自分の歌にはいつまでたっても自信が持てないので。そういう意味では、ミュージカルをやり始める前くらいから、歌に対するアプローチとか、届け方は変わってきました。今までは「歌を歌う、歌を届ける」というイメージでしたが、「言葉を届ける」という意識に変わってきました。
――そんな加藤さんの変化に、ファンの方のリアクションも変わりましたか?
どうなんでしょうね…(笑)。でも、笑顔になったような気がします。みんな、すごく感受性が豊かだから、楽曲によっては涙を流したり、笑ってくれたり、それこそ汗かいて「わ~!」って盛り上がってくれたり。そういうふうに応じてくれるのは、こっちの伝え方次第だと思うので、そこは意識するようにはなりましたね。
――加藤さんの歌は、ここ1、2年で急激に変わったような気がします。声と体がぴったりマッチングしたような。加藤さんに一体何が起こったのだろうとずっと思っていました。
まあ変わらず、発声とかトレーニングとか、次に作品があればそこで違う自分を見せないとって常に思っているので。役が違うと届け方が変わるのは当然なんですけど、それでも毎回、成長したと言われるのはすごく嬉しいし、そうでありたいと思っているので…。うん。響き方が変わってきたというのは、今まで使い切れていなかったことがたくさんあって、それをようやく自分のものにできてきたからかもしれないですね。でもまだ完全ではないと思うし、まだまだ自分は成長できると思うし…。その気持ちが大事なのかなと思います。
――声って時間かかるものなんですね。
いや~、そうだと思います。それは身をもって感じました。再演をやらせていただくと如実に感じるんですよね。初演では出なかったが音が出せるようになったとわかるので、自分でも。そうすると、もっとこういうアプローチもできるよなって思うんですよね。特にミュージカル『フランケンシュタイン』は、初演の時は本当にきつかったですけど、再演ではギリギリになることはほとんどなくなってましたね。本当、頑張って(声を)出しているって感じがあったんですけど、その感じが最近はなくなりました。
――そういう、頑張って出さなくなったというある種の余裕が受け手に届いているのかもしれないですね。
絶対そうだと思います。思い返せばいつも不安との戦いだったので。どの作品でも苦手な音があったので。最近はそこへの恐怖感、「ここが当たらないだろうな」っていう不安はあんまりないので…。だからのびのび歌えるし、それが自信につながるんでしょうね。もともと男の声帯は30歳からって言われていたので。30代から40ぐらいが一番成長するって。それを自分が体現できていることがすごくうれしいです。
――年齢を重ねて自分はどう変わっていくのだろうという期待感もありますか?
あります! これまた40歳から声が変わるというので、届け方、伝え方も変わってきますよね。歌える楽曲も変わってくるので、それも楽しみです。
取材・文/Iwamoto.K
<配信Live info>
Kazuki Kato Piano Live Tour 2021 ※配信チケット
2021/12/19(日)
■会場/心斎橋 JANUS
■時間/【第一部】13:00 ※第二部の配信なし
■料金(税込)/配信チケット 視聴券\4,000
・ライブ配信開始:2021/12/19(日)13:00
・アーカイブ配信:2021/12/26(日)23:59まで
・配信プラットホーム: PIA LIVE STREAM
視聴券発売日:2021/12/10(金)19:00~12/26(火)21:00
https://w.pia.jp/t/kazukikato-pls/
<Live info>
Kazuki Kato Live "GIG" Tour 2021-REbirth-
2021/12/16(木)
■会場/心斎橋 BIG CAT
■開演/18:00
■料金(税込)/全席自由 7,700円
Piano Live Tour 2021
2021/12/19(日)
■会場/心斎橋 JANUS
■開演/【第一部】13:00【第二部】16:30
※予定枚数終了。
■お問合せ/サウンドクリエーターTEL.06-6357-4400
http://www.sound-c.co.jp
「K.KベストセラーズⅡ」
●初回限定盤 TECI-1736 定価(税込):¥6,500
アルバムCD(2枚組)+60Pフォトブック
●通常盤 TECI-1738 定価(税込):¥4,500
アルバムCD(2枚組)
オフィシャルサイト http://www.katokazuki.com/