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2019年08月21日 <公演直前インタビュー!>きたやまおさむが語る音楽の効き目⁉︎
フォーククルセダーズの中心人物として「帰ってきた酔っ払い」「あの素晴らしい愛をもう一度」などの名曲を生み出したのち、医者を志し留学。その後、医師と音楽の活動を並行し、マルチに活躍するきたやまおさむ。今回のコンサートでは、専門である精神科の知識も活用し、かけがえのない音楽の魅力を紐解きます。
―九州大学を勇退されたのが2010年。現在もクリニックと音楽活動を両立されていらっしゃいますね。
1週間に4日間医者をやっているんですけど、週末は学会や協会の行事があることが多くて。そうすると毎年8月が私にとって「夏祭り」と称して音楽活動を行う期間になるんです。
自ら「祭り」というくらいだから、とても楽しみにしている時間です。今年は8月に3回コンサートがあります。
―そのうちの1回がこの名古屋でのコンサートですね。加藤登紀子さんとのトーク&コンサートとあります。
私は主にトークを担当するのですが、今回は皆さんに、人にとって音楽とはどんなものなのか?といったことをお話ししようと思っています。音楽は人生にとって欠かすことのできないものである。それをどういうふうに語るか?音楽は言葉だけではなくって歌っているわけなんです。まあ、私の持論があるので、なぜ音楽が必要なのか、心の健康にとって大事なのかという話をします。
―音楽は会話ではなくてメロディもあり、歌う人の声色もあります。
言葉以前の言葉みたいなものがあると思うんですよね。母親が子どもに聞かせる子守唄というのは子どもにとってその言葉の通りではなくて、それ以前の言葉みたいなものを含んでいるだろうと思うんですよね。「眠れ、よい子よ」と言葉で言っても眠らない子どもがほとんど。どう聴こえているかは、言葉以前の体験があろうかと。結局のところ私は、最初は歌なんじゃないかと思うんです、言葉は。お母さん皆んな、は子どもに向かって歌っているんじゃないかと思うんだよね。それを「マザリーズ」と呼んでいるんですけど、マザリーズというのは世界中のお母さんが子どもに話しかけるときに歌みたいに話しかけることを言うんです。母親言葉という意味ですね。この母親言葉というのは子どもとの絆を作るためには随分役に立っていて、声はピッチが高くてメロディを持っているんです。これを使ってみんな話している。それが子どもに使って、「〇〇ちゃん〜」って言っているわけですよね。
ー音楽の本質がマザリーズにあるということですね。
コンサートって、この声をみんな聴きに来るんじゃないかと思うんです。小さな子どもはマザリーズのメッセージを読み取ったりしているんだけど、そのうち成長し、マザリーズの内容を意識したり考えたりして、やがて言葉になっていくんだと思うんですけど。そういう言葉以前の言葉の要素をを歌自体が持っているので、私たちは歌を絶対に日常生活で必要としているんだと思うんですね。赤ちゃんはその言葉以前の言葉を聴いて安心して眠るのですが。この安心感を大人の私たちも必要とするわけです。では、どんな言葉や歌を聴くことで得られるのか。どんな聴き方でそれと出会うことができるのかという話をして、そんな話とともに聴く加藤登紀子の歌!これは入場料の三倍は役に立つよ(笑)。
―加藤登紀子さんの歌声も非常に重要になってきますね。加藤さんの歌の特徴は何かお感じになりますか?
それはやっぱり女性性が一つ中心にありますね。あの人は歌の中に虚しさがないのよね。虚しさを埋めてくれる一つの装置みたいなものを持っていますね。男性の歌には虚しい歌が多いと思うんですよね。女性の歌には寂しさみたいなものがあるけど、虚しさを歌わないね。一つの空間みたいなものが充実している。男性はそこにすごく隙間風が吹くんだろうな。そしてその隙間風を味わうんだけど、加藤さんと話してると「男はいつもそうよね」とかって言うよ。そしてエピキュリアン(快楽主義者)でもある。僕もそれは似ているところがあって、楽しむということはとても大事だと思っているし、どうしたら楽しいのかということをいつも心がけている。
―それは仕事も楽しむというような意味でしょうか?
これは僕の考えなんだけど、今、僕らは仕事をしているわけだよ。だから、ちっとも遊んでいない。私たちは。この遊びたい部分と大人として仕事をしなきゃいけない部分というのは分裂しているわけだ。あるいは、社会的に適応するためには大人をやっているけど、実は子どもみたいな部分があるわけじゃないですか。だから大人の人生と、子どもの遊びの部分が両方同じところにあるということは、奇跡みたいなものだと思うんだよね。そういうことは普通許されない。仕事は仕事。遊びは遊びであって、ここで遊んじゃいけないんですよ。だから、それを一緒のところに置くということはいいかげんだし、許されなくなりつつある。
それを、このトーク&コンサートで僕は両立させようと思っている。ここでは、考えることと歌うことの両立になるんだけど。
―きたやまさんご自身も日常生活と音楽活動を両立されていますね。
アマチュアバンドだった時には、充実した人生のほうが大事で、音楽というのはそのための方法だったと思う。女の子にもてたいからバンドを始める。女の子を口説くために歌を作るとか。それは歌のための人生じゃなくて、人生のための歌だと思う。ところが、職業的音楽家になった途端にこれが逆転するわけ。人生のための歌だったのが歌のための人生になっていく。それは僕からすればフォークソングじゃない。フォークソングは人生のための歌だったと思うんだよね。加藤登紀子さんもそういう人生だと思いますよ。だから、人は歌を通して加藤登紀子という人の人生を感じる。シャンソンというのはそういうものだと思う。
―きたやまさんにとってライブとはどのような場であるのでしょうか?
それはまさに、「祭りの1回性」というやつでしょうね。僕の著書では「聖なる1回性」という言葉を使っています。僕は、人生は1回だと思っている。コンサートも1回だと思うんです。ですから、加藤登紀子と北山修のこのコンサートも、多分ご覧になる方にとってこの日しかないものをご覧になると思うんですよ。人生が面白いことを一番具体的に示してくれるポイントですよね。この場におけるあなたとの会話も、これっきりですからね。この空気や面白さは当事者にしか分からないでしょう?これが一旦写真に撮られて、活字になった途端にその薄っぺらなこと!(笑)
8/22 THURSDAY 【チケット発売中】
加藤登紀子&きたやまおさむ
トーク&コンサート
◼️会場/愛知県芸術劇場 コンサートホール
◼️開演/15:00
◼️料金(税込)/S¥7,500 A¥6,500
◼️お問合せ/中京テレビ事業 TEL.052-588-4477(平日10:00〜17:00)
※未就学児入場不可 ◎共催/@FM