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2025年02月27日 中山優馬が「いただきます!」上町筋で農業を叫ぶ
毎夜シャンパンを浴び、きらびやかな世界を謳歌していた歌舞伎町のNo.1ホスト(中山優馬)が、いきなり汗と土まみれの農業の世界に飛び込む。歌とダンスと生バンド演奏で送る、異色の「農業系」コメディミュージカルのゲネプロ風景をレポートする。

中山優馬が事務所退所後の初舞台で演じるのは歌舞伎町No.1ホスト・ジュンこと手島広夢。不摂生による栄養失調で倒れた広夢は、元・伝説の歌舞伎町ホスト(小出恵介)が営む養鶏農家で働きながら「食と命の大切さ」を学んでいく――。
こう書くと、いま流行りのスローライフ物語っぽいが、農家の人たちが何気なくする日常会話は「この前、屠殺場でとりっこ(鶏)が逃げてさあ」となかなかにシビアでリアル。生バンドの演奏で明るくポップに歌う「YO!KEY!(養鶏)」には、当たり前に食べている肉や野菜をつくる人たちの熱い思いがほとばしる。
食材が私たちの口に入るまでに、誰がどんな思いで働いているのか。「いのちをいただく」とはどういうことなのか。ギラッギラのピンクスーツに身を包んだ中山優馬が、戸惑いつつも変化していく青年の心情を丁寧に演じている。

初めは「俺は絶対に農業なんかやらねぇ!」と息巻きつつも、ひよこから大きく育てて出荷するころにはたっぷりと情が湧いてしまう。いつしかインスタの写真はシャンパンからニワトリに。愛の対象は姫(ホストクラブの客)から雛鳥へと心変わり。ふてくされ顔からだんだんと笑顔に変わっていく中山がチャーミングだからこそ、「顔も知らないたくさんの人たちに美味しいと言ってもらいたい」というセリフに切なさが込み上げる。
本作は「塚田農場」などの飲食店を運営する米山久氏の著書「ありきたりじゃない新・外食」を基にしたオリジナル作品で、農家のビジネスや流通ルートにまつわるきびしい現実も赤裸々に描かれる。生産者と消費者の間で「中抜き」する組織も登場して、昨今の米の値上がり問題にも通じるアンタッチャブルな世界に切り込んでいる。2014年の初演から11年ぶりの公演だというのに、「農家の叫び」はいまも変わらないのだ。新たな販売ルートを開拓するために農家が一致団結する姿には「がんばれ!」とこちらも食べて応援したくなった。
はてさて、歌舞伎町No.1ホストはどのような選択をするのか。奥深いテーマを扱ってはいるが、コメディ要素が盛りだくさんな演出で、エンターテインメント作品として十分楽しめる。ラストは「日本の田舎からブロードウェイに飛んじゃった?!」と驚くほど華やかなショータイムで締め括り、明るく楽しい気持ちで劇場を出た。

記者会見では主要キャスト5人が登壇。中山は役作りのためにホストクラブに体験入店し、実際に接客もしたという。「これまでのホストのイメージがガラッと変わりました。とても人情味や信念のある人たちだと感じました。お客様を楽しませたいという思いはホストも俳優も同じかもしれない」と話した。
「みなさんが普段食べている食材がどうやってできているのか、改めて考え直すきっかけになる作品です。『いただきます』という言葉に込められた感謝の気持ちを大切に演じています。『食農育』というテーマをロックな音楽にのせて届ける、歌ありダンスあり、笑いに溢れた舞台になっているので、ぜひ劇場に見に来てください!」(中山)
◎Interview&Text/北島あや

2025年3月15日(土)、16日(日)
農業系★Rock Musical「いただきます!~歌舞伎町伝説~」
■出演者/中山優馬、小出恵介、Dream Ami、古謝那伊留、シルビア・グラブ 他
■会場/大阪国際交流センター 大ホール
■料金(税込み)/全席指定 一般11,000円
※未就学児入場不可
■お問い合わせ/いただきます!公演事務局(クリエイティブワンズ内)TEL 06-6356-6788(平日10:00~17:00)
